「老後の生活資金が不安…」「家を売らずにお金を用意したい」
――そんな悩みを抱える方に注目されているのが、リースバックとリバースモーゲージという2つの制度です。
どちらも“自宅に住み続けながら資金を確保できる”仕組みですが、その中身や適している人は大きく異なります。
この記事では、それぞれの制度の仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説し、向いているケースや注意点もあわせて紹介します。

リースバックとは?仕組みと特徴を解説

リースバックは、自宅を売却しても引き続き同じ住まいに住み続けられる仕組みです。
主に高齢者や住み慣れた家を手放したくない方が、老後資金や急な出費に対応するために利用することが増えています。
この制度では、不動産会社などに自宅を売却し、その買主と賃貸契約を結ぶことで、家賃を支払いながら住み続けることができます。
売却によって得られた資金は一括で受け取ることができ、使い道に制限はありません。また、所有権を手放すことで、固定資産税や修繕費などの維持管理コストの負担が軽減されるというメリットもあります。
リースバックのメリット
- 売却後も自宅に住み続けられる(引っ越し不要)
- 使途自由の資金がまとまって得られる(生活費・借金返済・事業資金など)
- 相続対策として活用できる(不動産を現金化することで、子どもたちに均等に分配しやすくなり、特定の相続人だけが物件を取得することによる不公平感や相続争いを未然に防げる)
- 固定資産税・修繕積立金などの維持負担が不要になる
- 年齢や物件に制限が少なく、幅広い層が利用しやすい
- 短期間で資金調達が可能(賃貸契約が成立すれば即入金も)
- 複数社に査定を依頼すれば、条件のよい売却先が見つかる可能性もある
リースバックのデメリット
- 月々の家賃が発生する(相場:10〜20万円程度)
- 契約期間終了後に退去を求められる場合がある(買主側の事情(転売・建て替えなど)で再契約できず、退去を余儀なくされるケースがあります。)
- 売却価格が相場より10〜30%程度低くなることもある
- 将来的に自宅を買い戻すことができないケースもある
- 信頼できる業者を見極めないと、契約トラブルにつながるリスクがある
- 家賃の値上げや契約終了の通告などにより、長期居住が保証されるわけではない
- 買主が変更になるリスクがある(不動産会社が物件を第三者に転売した場合、住み続ける条件が変わる可能性があります
リースバックは、賃貸借契約を締結するため家賃が発生します。
家賃の金額は自宅の売却金額に左右されるため、売却金額が高額であるほど月々の家賃も高くなる傾向にあります。
賃貸契約を締結するにあたって審査があることにも注意が必要です。
家賃を継続して支払っていくだけの預貯金や収入がなければ、リースバックができないことも考えられます。
さらに賃貸期間が長く続けば、結果として「売却しない方が得だった」 ともなりかねません。
そのためリースバックは、買い戻しの見込みがある場合や、足りない老後資金を補う場合など、一定期間に限って利用するのがいいでしょう。
リースバックが向いている人
以上のメリット・デメリットから、リースバックは次のような方に適した仕組みだといえます。
・まとまった資金がすぐにほしいが、住み慣れた家からは離れたくないという高齢者
・固定資産税や修繕積立金の支払いを軽減したい方
・自宅を相続対象にしなくてもよいと考えている単身者
リースバックは、「まとまった生活資金が欲しいけど、引越しはしたくない!」という人にとってメリットが大きい方法です。
さらに、リースバックは相続で発生しやすいトラブル対策にも役立ちます。
不動産財産を現金化することで、遺産分割額を明確にしたり、相続税の準備資金に充てたりすることも可能です。
相続対策や終活の1つとして考えることもできるといえるでしょう。
リバースモーゲージとは?仕組みと特徴を解説

リバースモーゲージは、自宅を担保にして金融機関から融資を受ける制度です。「逆住宅ローン」と言われることもあります。
家を担保にお金を借りて、所有者が亡くなった後に借入金を一括返済します。
生存中は利息のみの支払い、または返済不要の契約もあります。
つまり、所有者は生涯自宅に住み続けながら(所有権を維持したまま)、その資産を活用して現金を得ることができるわけです。
ここからは、リバースモーゲージのメリットとデメリットについて解説していきます。
リバースモーゲージのメリット
- 自宅に住みながら融資を受けられる(引っ越し不要)
- 所有権を維持できる(家族の同意があれば配偶者も安心)
- 生存中は元本返済が不要、利息のみ負担するプランもある
- 年金型・一括型・自由型など、受け取り方法が選べる
- 生活費・医療費・リフォーム費用など幅広い使い道に対応
- 一部の商品では使途制限が緩く、柔軟に活用可能(例:東京スター銀行「充実人生」)
- 終身保証型の商品を選べば、長生きしても資金切れのリスクがない(例:三井住友信託銀行「リバース60」、みずほ信託銀行「リバースモーゲージプラン」)
リバースモーゲージのデメリット
- 満55歳以上、戸建て限定など年齢・物件の条件がある(例:三井住友信託では60歳以上・一戸建てのみ)。また、東京スター銀行の「充実人生」では申込時に満60歳以上で、かつ対象エリア内の戸建住宅または一部のマンションに限られるなど、商品ごとに利用条件は異なる。
- 借入金の使途が住宅関連・生活費などに限定される場合がある
- 不動産価格の下落により、借入可能額が減る可能性がある
- 死亡後に自宅を売却して返済するため、相続が難しくなる
- 融資には推定相続人の同意が必要になる場合がある
- 対応する金融機関・地域が限定されている(都市部中心)
- 金利変動型のローンが多く、将来の負担が読みづらい
- 配偶者の死亡・離婚などで契約条件が変更されるリスクもある
※リバースモーゲージの詳細条件や利用可否は、商品ごとに大きく異なるため、必ず金融機関に確認しましょう。
リバースモーゲージが向いている人
以上のメリット・デメリットから、リバースモーゲージは次のような方に適した仕組みだといえます。
・自分名義の家に住み続けたい
・安定した生活費を毎月確保したい方
・子どもに家を残す予定がない方
リースバックは家の「所有」から「賃貸」になるのに対し、リバースモーゲージは自宅を売却するまで所有権はそのまま。さらに借りたお金はリフォーム等にも使えるので、「自分名義の家に住み続けたい!」「好きにリフォームしたい!」という方に向いています。
資金の受け取り方についても紹介しましたが、「年金型」を選んだ場合は、毎月の年金にプラスして余裕を持たせるという使い道もあります。
リースバックはまとまったお金を一度に得るのに対し、リバースモーゲージは月々少しずつお金を得ることができるという点も、両者の大きな違いだといえるでしょう。
リースバックとリバースモーゲージの違いを比較表でチェック
比較項目 | リースバック | リバースモーゲージ |
---|---|---|
資金調達方法 | 自宅を売却 | 自宅を担保に融資 |
住み続ける可否 | 家賃を払えば可能 | 原則、住み続け可能(死亡時まで) |
所有権 | 手放す(買主に移転) | 保有したまま |
返済方法 | 家賃を支払う | 死亡後に自宅を売却し一括返済 |
対象物件 | 戸建てもマンションも可 | 戸建てが主流(マンションは制限あり) |
利用対象 | 制限少なめ | 年齢・家族構成など制限あり |
向いている人 | すぐに資金が必要な方 | 長期的に資金を確保したい方 |
リースバックとリバースモーゲージに関するよくある質問
まとめ
リースバックもリバースモーゲージも、自宅に住み続けながら資金を得る方法ですが、それぞれにメリット・デメリットや利用条件が大きく異なります。
- 「自宅を売っても住み続けたい」→ リースバックがおすすめ
- 「自宅を担保に老後資金を得たい」→ リバースモーゲージがおすすめ
目的や家族構成、相続の希望などを踏まえ、自分に合った制度を選ぶことが大切です。
具体的な契約条件や利用可能性については、金融機関や不動産会社に個別に相談し、複数社を比較検討することを強くおすすめします。